こんにちは、tailor KONGの山本です
今回はスーツが誕生した流れ、起源についてご紹介していきたいと思います!!
スーツの誕生
スーツは1850年代、英国で誕生したといわれています!実際には明確に定義することは難しいのですが、現代のスーツの始まりとしては、この時期からという説が有力だそうです…!
歴史が近世に突入する17世紀頃までは、貴族の服装は豪華絢爛さが身分そのものを表していました。当時の男性貴族は、女性よりも華やかで装飾的な装いをしていた人もいたと言われています!
豪華絢爛な貴族の装いから上着がシンプルな見た目になってきたのは、16世紀頃から上流階級の装いとなっていたフロック(コート)あたりからと言われています。フロックはやがて、現在の正装であるモーニングコートの原型にもなりました。
さらに、そこから動きやすいように丈を短くしたのがテーラードジャケットです。テーラードジャケットの誕生と、上着とパンツが共布(ともぬの)になったことで、スーツが誕生したと言われています。
時系列で解説!
1666年、時の英国王であるチャールズ2世が「衣服改革宣言」を打ち出しました。男性の服装はさらに質素でシンプルな方向へとシフトし、質素なものの象徴としてベストが誕生。貴族階級の間で広まっていきました。
衣服改革宣言の背景には、戴冠して間もなく起こったペスト(黒死病)やロンドンの大火災によって、財政的な倹約を迫られたという事情もあったそうです。また、チャールズ2世が清教徒革命からの「王政復古」によって王位に就いたことから、平民へ気を使っていた部分もあったそう。
いずれにせよ、英国の貴族階級は他国に先立ってシンプルな服装になっていきました。これが、(他のヨーロッパ諸国に先んじて)英国がスーツを誕生させた土壌になったといわれています。
さらに、18世紀末頃になると、貴族は長丈のパンツとネクタイを身に着けるようになります。
それまで、フランスの貴族は半ズボン(キュロット)を穿いていました。しかし、(フランス革命時に大きな原動力となった)長ズボンを穿く労働者階級のサン・キュロット(=キュロットを穿かない人の意)が誕生します。
サン・キュロットたちは、半ズボンを穿いた貴族達を次々と処刑していきました。そのため、貴族側が市民に迎合するかたちで定着したようです。
貴族は労働者階級となる“平民”に迎合し、また、社会の合理化に伴ってシンプルな服装を心掛けるようになります。革命の余波を受けて、英国でも半ズボン&ストッキングに代わって長ズボン&ブーツを着用するようになりました。
上着にメスが入ったのは、19世紀の前半~中頃と言われています。動きやすいように丈が短くなり、シャツや長ズボンと併せて平服化したラウンジスーツ(ラウンジでくつろげるスーツ)が誕生しました。
スモーキングジャケットもこの時代に誕生しましたが、こちらは「(くつろぎながら)タバコを吸うためのジャケット」という意味です。「正装に対する楽なウェア」としての位置付けが、ラウンジスーツやスモーキングジャケット本来の役割でした。
いずれにせよ、シンプルなフロックやベスト、そして長ズボン。これらが、19世紀の英国やフランスにおける貴族の装いとなり、やがて上着にメスが入ることで現代のスーツが(ぼぼ)完成しました。
そして、「くつろぐためのアイテム」だったジャケットが、その動きやすさから仕事着へと転用されるようになりました。これが、現在の「仕事着としてのスーツ」へと繋がっていきます。
そのような変遷の中、「上流階級としての意識やステータス」を得ようとするマインドこそスーツに潜む“背景”となり、私たちが今日まで「スーツを着用し続けている理由」でもあります。
日本への普及
19世紀、世界の覇権国であった英国の価値観は世界の諸地域に波及しました。英国と比して階層意識が希薄といえる日本においても、急速な文明開化と“列強国”としての立ち振る舞いが求められた時代です。是非はさておき、それが当時の倣うべき価値観だったことは間違いないでしょう。
日本では1872年(明治5年)、明治天皇の勅諭(ちょくゆ)によって、洋服が礼装として採用されることになりました。国民全体にまで洋装が普及するのは戦後になるものの、「食肉や洋装が列強国の証である」という当時の価値観に倣ったものです。(神道行事を除き)皇族が現在も公務でスーツを身に纏うのは、この頃の規範を現在も踏襲しているからです。
日本にも素晴らしいメーカーやテーラーがありますが、英国のサヴィルロウやイタリアのナポリような都市や地域単位のブランド化よりも、全国の国道バイパス沿いに洋服の青山や紳士服のコナカなどが計画的に構えられました。
こういった国民性や普及の仕方は、一億総中流的なスーツの普及に貢献しました。「皆が廉価でそこそこの物を」という階層意識の低さもまた日本らしさの一端ともいえるのでしょう。
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